AIの前に、現場を見る。 運営:株式会社Nexa
業種別のAI活用2026年9月6日

栃木の介護事業者がAIで記録を減らす方法|現場で始める実務3段階

結論: 栃木の介護事業者がAIで減らしやすいのは、経過記録や申し送り、会議録の原案を整える作業です。
理由: 生成AIは文章の整理を支援できますが、利用者の状態確認とケア判断、記録の確定は職員が担う必要があるためです。
実行: まず一つの記録様式を選び、重複入力と記載項目を洗い出してから、小規模に原案作成を試します。
注意: 介護関係記録には要配慮個人情報が含まれ得るため、承認されていない生成AIへ実データを入力しないでください。

対象読者:栃木県内の介護事業所の経営者、管理者、業務改善担当者
今日やること:職員が同じ内容を二度以上書いている帳票を一つ特定する

介護記録を減らそうとして、最初に生成AIのサービスを選ぶと、現場の負担がかえって増えることがあります。
入力項目が職員ごとに違い、紙と介護ソフトへ同じ内容を転記している状態では、AIが作る文章の確認にも時間がかかるからです。

栃木県の介護人材計画は、介護ロボットやICT機器の導入だけでなく、業務の効率化と職場環境の改善を一体で進めています。
記録作業も、機器選びより先に流れを整える必要があります。

結論:AIは原案を作り、職員が事実と判断を確定する

生成AIに任せやすいのは、職員が残した事実を所定の形式へ並べ直す仕事です。
経過記録の原案、申し送り事項の要約、サービス担当者会議の議事録案などが該当します。

一方、利用者の状態を観察し、変化の意味を判断し、対応を決める仕事は職員に残ります。
生成AIはもっともらしい文章を作れても、現場を見ておらず、出力の正しさを保証できないためです。

厚生労働省の2026年3月資料も、計画書やサービス担当者会議の議事録について、生成AIによる原案作成が業務効率化に資するとしています。
ただし、同じ資料はAIの信頼性とセキュリティを課題に挙げ、効果と留意点の実証が必要だと記しています。

役割を次のように分けると、便利さと記録責任を混同せずに済みます。

作業 AIやICTに任せる範囲 職員が担う範囲
経過記録 音声や箇条書きから様式に沿った原案を作る 観察事実、時刻、数値、対応を原記録と照合する
申し送り 複数記録から確認事項を抽出する 優先順位を決め、受け手へ伝達する
会議録 発言を整理し、決定事項の候補を分ける 決定内容、担当者、期限を出席者が確定する
ケア計画 記載済み情報から文章案を整える 本人の意向と専門職の評価に基づき方針を決める
介護記録でAIが担う原案作成と、職員が担う事実確認、判断、記録確定の分担
介護記録でAIが担う原案作成と、職員が担う事実確認、判断、記録確定の分担

出典:厚生労働省/テクノロジー等を活用した介護現場における生産性向上の重要性とその施策について

栃木の介護現場で記録業務が改善対象になる理由

栃木県が2024年3月に策定した「はつらつプラン21(九期計画)」は、2024年度から2026年度までを対象にしています。
県は、現役世代人口の減少と85歳以上人口の増加を見込み、介護人材の確保と定着を課題に据えました。

計画策定時の2022年度には、県内介護職の有効求人倍率が2.86倍で、県内全産業の1.19倍を上回っていました。
介護現場で職員不足を感じる事業所の割合も60%を超えるとされています。
これは2026年現在の求人倍率ではありませんが、人材確保だけでは支えきれないという県の問題認識は読み取れます。

では、記録時間を短くすれば、そのまま人手不足の解決になるのでしょうか。
そう単純ではありません。
記録はケアの経過を共有し、事故や状態変化を追い、サービスの適正さを説明するために必要です。
削るべきなのは記録そのものではなく、同じ内容の転記、読まれない自由記述、担当者ごとに違う表現です。

厚生労働省の生産性向上ガイドラインは、介護業務を直接的なケアと間接的業務に分け、課題を抽出して改善を続ける考え方を示しています。
記録と報告様式の工夫、情報共有、音声入力を含む端末からの入力は、そのための手段です。
改善で生まれた時間を利用者に向き合う仕事へ戻せて、初めて効果を説明できます。

介護記録を減らす対象を、必要な記録と見直す作業に分けた図
介護記録を減らす対象を、必要な記録と見直す作業に分けた図

出典:栃木県/栃木県高齢者支援計画「はつらつプラン21(九期計画)」厚生労働省/介護分野における「生産性向上」とは?

AI記録支援を始める三つの段階

最初の一週間は、AIを使わず、一つの帳票が完成するまでを観察します。
経過記録なら、現場メモ、口頭の申し送り、紙の様式、介護ソフトへの入力を時系列に並べます。
同じ事実を誰が何回書いているかが見えれば、先に統合すべき入力欄が分かります。

1. 記録項目と表現をそろえる

自由記述をすべて短くする必要はありません。
体温、食事量、服薬、本人の発言、職員の対応など、後から確かめる項目は分けて残します。
その上で、申し送りに必要な項目と、請求や監査のために必要な項目を整理します。

生成AIは、入力の粒度がそろうほど安定した原案を作りやすくなります。
逆に「いい感じに記録して」と頼む運用では、職員が不足分を探す確認作業が増えます。

2. 個人情報を入れる前に利用条件を確認する

介護関係記録にある病歴、身体状況、病状、治療、障害の事実などは、要配慮個人情報に当たり得ます。
氏名だけを消しても、年齢、地域、家族構成、症状の組み合わせから個人を識別できる場合があります。

実データを扱う前に、少なくとも次の点を事業所内で確認します。

  • 入力データがサービス提供者の学習に使われない契約になっているか
  • データの保存場所、保存期間、削除方法が分かるか
  • 利用者情報へアクセスできる職員を制限できるか
  • 入力と出力を介護記録へ移す手順が決まっているか
  • 誤記や漏えいが起きたときの報告先が決まっているか

「無料の生成AIなら、個人名を消せば使える」という判断は避ける必要があります。
事業所が利用を承認していない環境では、架空の記録で様式を試すところまでに留めます。

出典:個人情報保護委員会、厚生労働省/医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス

3. 原案一件から測る

試行では、一種類の記録を一件ずつ処理します。
職員は元のメモとAIの原案を照合し、事実と異なる箇所、抜けた項目、不要な表現を数えます。
同時に、入力開始から記録確定までの時間を、従来手順と新しい手順で測ります。

時間だけが短くなっても、修正件数が増えれば定着しません。
一方、確認項目が固定され、誰が使っても同じ基準で直せるなら、対象件数を少しずつ増やせます。

介護記録の現状把握から、安全確認、小規模試行、効果測定へ進む三段階
介護記録の現状把握から、安全確認、小規模試行、効果測定へ進む三段階

介護記録のAI活用を、小さく試したい事業所へ

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まとめ:県の相談窓口は受付中、令和8年度補助金は終了

栃木県は2025年7月、宇都宮市若草のとちぎ福祉プラザ内に「介護のしごとサポートセンターとちぎ」を開設しました。
介護テクノロジーの導入と定着、課題整理、セミナー、アドバイザー派遣などを扱うワンストップ相談窓口です。
開所時間は平日の9時から17時、電話番号は028-627-2940と案内されています。

一方、令和8年度栃木県介護テクノロジー定着支援事業費補助金の受付予定期間は、2026年6月5日から8月10日まででした。
2026年9月6日時点では終了しています。
次年度の実施は未公表のため、導入時期と予算を決める際は県公式ページか相談窓口で最新情報を確認する必要があります。

補助金を待つ場合でも、記録様式の整理と処理時間の測定は始められます。
最初に選ぶのは、職員が同じ事実を二度以上書いている帳票です。
原案を作るAIより先に、その重複を一つ減らせるかを確かめると、導入後の効果を数字で判断できます。

参考リンク

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